2011年12月24日土曜日

いんたーなしょなるTENKARA


北の安曇野渓流会  理事 ● くわた一宏

日本の釣り人と釣り業界関係者のほとんどが「日本固有のマイナーな釣り」と信じきっているテンカラが、米国を中心に欧米で着実に浸透しつつある。
"tenkara" をググれば結果は226,000件、もちろんそのほとんどは日本のサイトじゃない、無数にある Tenkara のフォーラムサイトも盛り上がっている。米国 eBay でも関連商品は多いときで50を超え、カナダ、イギリス、オーストラリアにも出品があり、出品点数はここ3年で徐々に増えている。
そのきっかけになったのが Tenkara USA、石垣会長の愛弟子でもあるダニエル氏で、少なくとも市場としてのテンカラを世界に広めたいちばんの功労者だろう。世界初のテンカラ専門店が米国だったってことは驚くべきことで、反面、発祥の国で、曲がりなりにもこれを生業の一つにしているボクとしてはかなり複雑な気分だった。
日本でのテンカラウォレットの反応に業を煮やし Tenkara USA に営業をかけたのが2年前の冬だったか?  幸いにもすぐにオーダーを頂戴したが、当時は20〜30個売れれば御の字と思っていた。それがこの2年でイギリス、カナダを含め販売数は180個超。なお、今日まで日本で売れたのが2個 (試作特価品を除く)。
今年春には Tenkara USA をモロに真似た Tenkara International なる通販サイトがオープンした。それを知って血相を変えた(?) ダニエルからメールが来た。「自分が持っている商標を使われた。テンカラウォレットも真似している。君も抗議したほうがいい」と。
商品画像を見て笑ってしまった、あまりにお粗末で。それより、真似されて実はうれしかった。偽物が出来て初めて本物だから....。こんな日本人的感覚はダニエルは理解できなかったようだけど、彼の抗議の末、閉店するかと思ったら屋号を Tenkara Global に改名して、ウォレットも商品名を変えて、さらに春日氏の毛鉤ケースの偽物まで加えてシブトくやっている。.... ちなみに石垣会長もオーナーと笑顔で登場して、そこのインチキ竿を "I think that is a wonderful Tenkara rod" と言ってることに ....。日本以外の世界はたくましい。
このご時世「も」あって我が K'z craft の、特にイベントでの売上は極端に落ちているが、対面販売で長年お客様を観察していて、たとえば会場全体見回すとかテーブル全体を見るとかの物理的な視野が徐々に狭くなっていることに気づいていた。それは景気が悪くて小遣いが少なくなっただけの問題ではなく、精神的な視野、興味の対象が狭まっているということなのだろう。
風を読み、場を読み、水を読む視野もなく、付け焼き刃のテクニックだけで釣れるほどは残念ながら魚はたくさんいないでしょうに。
日本国と日本人の五感に精神までが萎縮しているなかで、誇るべきマイナー文化が自国民の知らないところで自由に世界を駆け巡っている。

今年夏、万久で名人・吉村氏にタモ作りの指導を受けるダニエル



今年イギリスで出版されたテンカラのマニュアル本。$32.08