2013年2月6日水曜日

ロングラン始まる


北の安曇野渓流会  会長 ● 石垣尚男


今年も寒狭川 (かんさがわ) 中部から私のテンカラシーズンが始まった。この歳になっても解禁となるとうれしいもので、子供の遠足のように前日からソワソワし、予定より早く目が覚めてしまい、「オイ! 起きろ」と目ざましに声を掛けた。
川につけばテンカラは昨年も一緒だった還暦越えのサウスポー師が一人だけ。声をかけると2匹なのか、たくさん釣れているのかピースサインである。年寄りが元気である。
暖かで風のない朝だが、水が冷たいのはいつものとおり。初泳ぎしないように足元に気をつけなくては。泳げば年寄りの冷や水になるし、老い先を悲観して入水自殺と思われかねない。
解禁をここからスタートするようになって20年近くになるだろうか…。昔のことなのでどれくらい前か忘れてしまった。始めた頃は寒狭川の本流、今のルアー・フライ専用区はなかったので支流の巴川がフィールドであった。餌釣りが抜いていった後でも、結構、魚、といっても成魚放流されたアマゴであるが残っていてそれなりに楽しかった。
ルアー・フライ専用区が出来て餌釣り師とのトラブルがなくなったが、その分、入れ替わり、立ち替わりのルアーと毛バリの波状攻撃で、スレるのも早い。今年は漁協が赤字続きのため放流数を減らしたらしく、確かに例年より魚の数が少なかった。となると午前中はボウズである。お祭りの解禁日なので、釣れても釣れなくてもいいが、せめて片目だけは開けたい。
実はここは3時過ぎてからが面白い。山の端に日が落ちて水面に影ができると、影の動きにあわせて対岸の魚が近くまで寄ってくるからだ。しかもその頃には釣り人も少なくなり警戒心も薄れる。クイクイ動くテンカラの毛バリも見慣れていないので、それなりに面白い釣りができる。といっても2匹掛け、1匹合わせ切れで終わったが…。解禁!  これからロングランが始まると思うだけでウレシクて、釣れなかったことなどどうでもよかった。
ロングランのスタートは気が重いことでもある。そう、花粉症である。この日、もう来てしまったのだ。家に帰ると眼がクシャクシャで、鼻ムズムスである。まさかりかついだ金太郎と思っていたので不覚だったと深く反省した。やがて涙が止まらず、3ヵ月遅れの赤鼻のトナカイになるかと思うと気が重い。私の花粉症も5月末までロングラン。解禁のうれしさも今一つである。