2014年2月6日木曜日

中寒狭の毛バリ変遷


●北の安曇野渓流会会長・石垣尚男

2月2日(日)、今年も寒狭川中部漁協から長いシーズンがスタートした。ここからスタートがもう20年近く続いている。解禁日に行けなかったのは1回か2回で、それだけ行けたのは暇だっただけでなく健康や家族の協力などもあるので、ありがたい話である。20年近く通って同じ場所で同じことをやるわけで、この間の変遷も経験する。その一つが釣れなくなったことだ。
今でこそ本流にフライ・ルアー専用区ができたが、これができる以前はもっぱら支流の巴川が釣り場で、餌釣り師と競合しながらも、むしろ今より釣れていたように思う。その頃、新城市のフライマン新川さんの巻く新川スペシャルは抜群の威力があった。黒い胴にテールがついていて、エルクヘアカディスを巻いたもので、クイクイ引けばかすかによろよろとテールを振り、その何がよかったのかわからないが解禁日にこの毛バリで33匹釣った年もあった。
やがて、次第に新川スペシャルの威力も影を潜めた。毎年、魚は代わるわけで毛バリを憶えたり、子孫に伝わることはないのになぜかピタッと新川スペシャルでは釣れなくなった。それは専用区が出来た頃と期を同じにしている。そうなのだ。専用区でとっかえひっかえ毛バリを見るのですっかり毛バリだということがバレてしまって、威光がなくなったからだ。支流で餌釣りと競合している頃はテンカラもフライも少なかったので毛バリは珍しかったからだろう。
専用区でテンカラ、フライ、ルアーの競合になった頃からピタッと数釣りができなくなった。その年ごとでアタリ毛バリがあるような、ないような。ハックルも胴もないただの赤いハリだけで釣れたり、ヒモ毛バリがよかった年もある。去年、ヒモ毛バリがよかったからと言って、では翌年もいいわけではない。ただ新城のSさんは毎年コンスタントに釣る。毛バリは真っ白のテールありである。白は視認性のためだろう。特徴は毛バリを引くスピードと、引いて止めてのテンポにあるようだ。視認性重視、ヒモ状毛バリ、スピードとテンポ、このあたりに秘密がありそうだ。
今年はタングステンヘッドで沈ませる毛のない毛バリを作った。少し沈ませクイクイ引けば明らかにふつう毛バリより追いがいい。7割8分5厘の確率で魚がチェイスしてくる。しかし9割9分8厘の確率で見切られる。テールだけでつまんで逃げるのもいる。キラっとヒラを打つのはくわえて逃げるときだ。毛バリ(偽物だ)ということがわかっていて、まるで遊んでいるようにも思える。それ食え、やれ食えで、それはそれなりに面白い。
今年は10年ぶりくらいで雨の解禁日となった。春近しを思わせる暖かな小雨も昼にはあがり、風のない午後となったものの、追えども掛からないいつもの解禁日となった。放流されているアマゴがやけに小さいのが気になった。そうなのか中寒狭・・・。