2014年1月31日金曜日

早春賦



●理事:川北卓司

いよいよ解禁、この地方では毎年、2月16日前後が解禁日となる。
といっても、私のようなテンカラ師にはまだまだシーズンは遠い。解禁当初は、釣りというより山菜採りに夢中、というのが例年のパターンになっている。
毛鉤に魚が出るのに2ヶ月程待たなければならない。無理すれば釣りはできるのだが、
満足なサイズとの出会いは期待できないのだ。

ただ、本流では解禁当初は大物釣りのチャンスがある。
犀川、高瀬川では連日50センチ超えの夢を追ってフライマンが立ち並ぶ。この時期は本流は活水、魚はわかりやすいポイントに集まり、比較的狙いが付けやすく、誰かの竿にラッキーが訪れる。
私も、何度もチャレンジしてきた。ラインはシンキングタイプのものを使い、川底スレスレを小刻みにラインを引くような誘いの釣りをする。一日やってなんとか3〜4本は釣れる。型は大体30センチ前後、うまくいけば50センチ。そんな釣り。
でも、4〜5年くらい前から、ちょいとした異変が起こっている。以前は、ヤマメやイワナが5割、あとはレインボウだったのが、今はブラウントラウトばかり。ブラウンは活性高く、魚体も大きいから釣りは面白いのだが、私はなぜか好きになれない。タイワンドジョウみたいな、、、いや、これも釣り人のわがままなのであろう。にしても、安曇野の川にはそれは似合わないと思うのである。
そんな理由で、この時期は川には立たなくなった。それに、一日中川に立ってみなさい。容赦のない川風、北アルプスからの吹き降ろしは生半可ではなく、午後からの強風の中では、それはもう、釣りというより修行の世界。私は根性もないので山菜採りの方が余程よいのだ。

しかし、自宅近くの川はこの時期よく観察している。10年くらい前から。
ここ数年、魚が減ったのか、あるいは水質が悪化したのか、秋から冬、そして解禁時期に魚影が見られない年が続いていた。20年ほど前は、水温む頃、レインボウは列をなし、良型のヤマメは本流から谷へ遡上している姿が認められたものである。それがその後、全然見られなかった。

ここ数年、何度かそれを確認できた。去年の秋は数も多かった。今年は良いシーズンになるかもしれない。それが今シーズンへの期待である。魚影はいたるところで発見できるのである。その原因も何となく想像できる。
温暖化の影響という人もいるが、私は北国で暮らしていて実感するに、温暖化どころか寒冷化しているようにさえ思う。年々、寒くなっているような、、、。この間、テレビである大臣が、近年南極や北極の氷が解けて水位が40センチ程上がり、二酸化炭素を減らさなければならないとコメントしていたが、この人、アルキメデスの原理を知らないのだろうか。氷は水面から出ている部分は膨張している体積だけで、全部解けても水位は変わらないはずだ。それに、気温が0.8度上がっても氷は解けない。氷は温度が上がっても解けない。融点で解けるのだ。南極は-40度ですよ、大臣。ヒートアイランド現象はあるが、北国はやはり寒いのだ。この時期に限って言えば、川の水温も昔と変わってはいない。大自然を数年の単位で考えてはいけない。おっと、話がそれちゃった。

考えられることは、一番大きな影響として釣り人が減ったということではないだろうか。データはないが、谷に行って感じることは明らかに釣り人の数が減っているということ。年配の餌師の方々の数は変わらないだろう。でも、若い人の姿が見えない。特に、フライマンが激減してしまったように感じる。これも時代の流れ、今若い世代はインドアー志向であるといっていい。インターネット、ゲームもあるし、DVD、ブルーレイ、出かけるならコンサートに各種イベント。釣りに夢中になって一人山へ分け入る若者は、絶滅危惧種である。谷では年金制度でいう最悪の状態、世代形成が逆三角形になっているのだ。単純に釣り人が減れば、魚は増える。理由はともあれ、魚は戻ってきたようだ。


川の情報

犀川・・・
今が釣り時、雪シロがはいると一気に増水し水温も下がり、釣りはできなくなる。一時の夢を追うならここ。しかも、大物の夢が見れる。狙い目はその日の水況を見て決めるのが一番。(魚の付き場所など)

高瀬川・・・
ポイントは限られる。やるなら川を熟知した人同伴でないと辛い。たぶん、虚しい釣りになる。私は、5年通いに通って、2本だけ。でも、その2本とも尺オーバー。真っ白に銀化したヤマメだった。2本でも満足。狙い目は、高瀬橋から蓮華大橋まで、それに犀川合流付近。

鹿島川・・・
今は勧めできない。やるなら5月以降。でも、ここ数年、ブラウンばかりでゲームとしてやるのは面白いが、北アルプスの山岳渓流としては、なんだか興ざめかも。狙い目は爺ヶ岳スキー場第四駐車場から上5キロ。大雨ごとに渓相が変わるので現場にて判断したほうが良い。

籠川・・・
この川は完全な夏川である(と言われている)よって、早期には水もくよい釣りができない(と言われている) 高瀬との出会いからは早い時期でも良い。ただ、やたら工事の多い川。

葛温泉・・・
温泉のおかげで水温は適正でほぼ一定。早期から釣りはできる。ダムからヤマメが遡上してくる6月や9月以降は大物も釣れる。ただし、本来イワナの谷なので、早期はなかなか釣れない。イワナは食わないときは頑固一徹、食わないのだ。シーズンを通してコンスタントには釣れる谷。

乳川・・・
上流部は源流志向の方。テンカラやフライなどは思いっきり下流を狙いたい。ちひろ美術館前後5キロ全域。どういうわけか、ここでは上流から流芯の上でぐいぐい毛鉤を動かすような釣りがよい。普通に下から狙っても魚はなかなか出ない。

中房川・・・
丁寧に釣れば良型も釣れる。しかし、この川は通った人でなければそうは釣れないだろう。非常に難しい川。狙いは山麓線(306号線)から堰提を挟み、上流。

烏川・・・
ここのイワナは鉄分の多い川石のせいか、腹がオレンジっぽい。魚影は濃くはないが割り合い、教科書通りに釣れる川。といっても、その日の条件次第。広域農道(306号線のすぐ東に並行)から上流。

穂高川・・・
情緒も何もない里川。私のような変人しかやらないかも。でも、ここでテンカラ振るにはそれなりの理由が。でっかいの見たもん!

白馬方面は別の機会に。


 春と聞かねば 知らでありしを
 聞けば急かるる 胸の思いを
 いかにせよとの この頃か
 いかにせよとの この頃か

 解禁と聞かされなければ
 知らずにすんだのに
 聞いたら、わくわくしちゃう
 この釣りの思いを
 まだ寒い時期 どうすればよいのか
 どうすればよいのか この時期を

さて、解禁。みなさんは今年どのようなプランをお持ちでしょうか。長野県、安曇野から大町あたりの渓流、一度お出で下さい。釣りに飽きたら美味い蕎麦、そして、清々しい空気と水、夕マヅメは本流でおおらかに毛鉤を振って、充実した一日を過ごせることでしょう。
ただし、釣果は保証しません。自然は偉大なのです。